日帰りはもったいない!地方の魅力〜宇陀編〜
Writer: トラベルデザイナー 松下 裕美
ガイド本には載っていない地方の魅力
突然ですが、みなさんは旅行の行き先をどうやって決めていますか?
最初から目的がはっきりしている場合を除いては、本屋さんに行って旅行ガイドブックを手にとって決める方も多かったのではと思います。SNSが発達し、情報が簡単に手に入る今は、Instagramに投稿されているまるで海外のような風景や新鮮な海鮮がどっさり載った海鮮丼などいわゆるインスタ映えする写真がきっかけで行き先を決める人が増えています。
私もそうですが、Instagramを見ているとここはどこ?と思うようなスポットの写真が投稿されていたり、雑誌で載っていないようなお店もSNSで知ることができるようになりました。それで思ったのがガイド本にや旅行番組で紹介されていないところにも魅力的なスポット、おいしいものがあるということ!
私はもともと旅行に時は地元の人知らない定食屋さんや和菓子屋さんが好きでどちらかというと観光地化されていないところに行くことが多く、もっとローカルの魅力をお伝えできたらと思っています。
前置きが長くなりましたが、そんなローカルの魅力あふれる地域をご紹介したいと思います。
▷薬のまち、宇陀とは
奈良県の北東部に位置する宇陀市。日本書紀に宇陀での日本最初の薬猟の記録があるように、飛鳥時代から薬草づくりが行われてきた薬のまちで、今でも日本最古の「森野旧薬園」や薬問屋であった細川家跡の「薬の館」が現存しています。
そんな歴史がある町には昔から続く酒造や和菓子屋さんなどおいしいものが多いのが魅力の一つです。
▷宇陀エリアのおいしいローカル旅
旅の出発は近鉄大阪線の榛原駅から。
駅からバスに乗って大宇陀へ。
まず立ち寄ったのが恒例の道の駅(笑)
◆道の駅「宇陀路大宇陀」
https://www.michi-no-eki.jp/stations/view/702
すごいすごい!足湯もあるし、この近辺で採れる作るものたちが一堂に介しています。
隣の直売所もお花も季節のお野菜も安くて生き生きしてるっ♡
そうこうしているうちにお昼の時間。古い町並みが残る通りにある古民家のお蕎麦屋さん。
▷古民家のお蕎麦屋さんでランチ
◆手打そば&グリル まほろば
https://mahorobamaru.wixsite.com/sova
築100年を超える、元写真館の古民家を改装し2018年にオープンされた店内はとても静かで落ち着く雰囲気です。
なす天蕎麦 1,280円 と、
まほろば膳 2,000円 を注文。
豚の角煮と、とろろ飯に、自家製の無添加ドレッシングのサラダ。
こだわりという石臼挽き ミニおろし蕎麦は、「乾くのでお先にどうぞ」と。
やや細麺で、つるっとさっぱり頂けちゃう。穏やかな時間をご馳走さまでした。
▷酒蔵通りを散策
おいしいランチを食べた後は「酒蔵通り」へ入ります。
昔は30軒ぐらい日本酒蔵のあった酒蔵通りですが、今は2軒が残るのみ。
まずそのうち1軒の酒造へ。
◆久保本家酒造
江戸時代に創業され、なんと300年の歴史を持つ歴史的な酒造さん。
老舗ながら、生酛やどぶろくまで様々な日本酒を製造し、日本酒カフェや飲食店を営業されています。
7年寝かしましたという、生酛の古酒をいただきました。
高い香りとうらはら、飲み口は辛口で深みのある味わい。
伝統的な造りの建物の奥では、木、金、土日だけ酒蔵カフェがオープンし、スイーツなどもいただけます。
先に進む道中で、百貨店と名のつくお店を見つけました。
◆長井百貨店
レトロ!かわいい。やすいっ。かわいい!
値つけまで昔のまま!
いちごのスプーン♡かわゆすぎるっっっ。
ここを継ぐためか、お婿さんに来てもらったのよと笑う店主のおばぁちゃん。昔は宇陀の紙卸業が母体で、ここでも紙を売っていたと教えてくれました。
いつまでも長生きしてね。ありがとう。
そしてもう1軒の日本酒蔵へ。
◆芳村酒造
https://www.begin.or.jp/~inadoya/
こちらも趣のある店構え。中へどうぞどうぞ、と入れていただくと。
真ん中にどどん!とそびえるのは、酒米を蒸す窯。おおっきぃーーーっ。。
蒸したても美味しいのかなぁなんて*
琺瑯でできているタンクは初めて見ました。
今でこそ女性の杜氏さんもいるけれど。昔は日本酒は醸すのもすべて男性の仕事で、女性は製造の空間にも入れなかったのだとか。
日本酒蔵は、仕込み場なんて入れてもらえないところも多いので、私も始めての体験。ありがとうございました。
続いて隣の事務所で試飲させていただいたのは、精米歩合60%の吟醸酒 "千代乃松" と
シロップかのようなとても甘い香りに、あと味の旨味がたっぷり。
そして、精米歩合95%の赤米で仕込んだ、なんと8段仕込みという変わり者さんも。
香りは紹興酒のように熟成感があり、ブラインドで飲んだらどこかの赤ワインかなと思うぐらい。日本酒とは思えない。実はこちらの杜氏さんはワイン好きだとか(笑)
酒造の近くのお菓子屋さんへ
◆御菓子司(おんかし) 志を乃屋
http://www.okashinara.net/archives/618
草餅にぶどう大福、その場で焼いてくれるみたらし団子!魅力的なお菓子がたくさんっ。
ここは昔、この宇陀の地で柿本人麻呂が詠んだ詩にちなんだ『人麿最中』が有名だそうで、さっそく!
詩の中にでてくるお月さま(栗)が、最中のなかにも入っている♡
優しいやさしいお味は、あんこから手づくりしているかという。
お茶まで出していただいてしまいました。
ご馳走さまでした。
▷歴史的町並み「宇陀松山」で食べ歩き
歴史的建造物の平屋が並ぶ、宇陀松山の町並みのなかにいよいよ入っていきます。
まず目に付いたのが洋菓子店Amandaさん。
◆Patisserie ANANDA
https://www.instagram.com/ananda_staff/
住所:宇陀市大宇陀拾生1850-1
店内に並ぶケーキや焼き菓子たちは、なんでここに?!と失礼ながら驚いちゃうぐらい、都会にも本場フランスにも負けない繊細さで。
お値段もとってもひかえめでびっくり。嬉しいっ♪スペシャリテのシュークリームは、皮がしっかり香ばしく。柔らかな甘さのクリームも絶妙においしい~っ。
美人すぎる!オーナーパティシエの太井さん。
大阪の有名パティスリーの他、本場フランスのアルザス地方などでも修行をされていたそう。どおりで・・・!ごちそうさまでした。
左側にはなにやら良い雰囲気の鶏肉屋さん。
◆仲尾かしわ店
https://tabelog.com/nara/A2904/A290403/29005314/
ご自身で平飼いされている鶏を、朝びきでこのお店に並べられているのだとか。
『宇陀味どり』という赤身のしっかりした鶏肉を焼鳥にするのが絶品ですと。
その向かいには宇陀唯一のお醤油蔵と直売所。
◆黒川醤油製造場
http://www.shokokai.or.jp/29/292121S0439/i/index.htm
お店に入ると、たくさん並ぶお醤油ともろみたち。
お味見をさせていただくと、だし醤油はこれからの時期のおそうめんにぴったりのあっさりさ。だしぽんずは、さっきの鶏肉で水炊きにしたい!
茄子や瓜の入った野菜もろみも。
もう通りを歩くだけで寄りたいお店がたくさん!
お腹いっぱいになったところで、薬の町、宇陀らしい場所へ。
◆森野旧薬園
http://www.morino-kuzu.com/kyuyaku/
薬の町、宇陀を代表する薬園で、江戸時代からの薬草園が今でも残っているのは日本でもここだけだとか。
入館料300円を払い中に入ります。ひっろ!!
ここは400年前から吉野葛を生成し、葛根湯などの漢方薬に仕立てていたという。
そしてびっくり!入口からは想像もつかないような広い広い薬草園が奥に森のようにひろがります。
季節によって、カタクリの花など様々な花も咲き誇り四季折々に楽しみがあるそう。
こんなところがあったなんて。
そして!楽しみにしていたこちらへ。
◆松月堂 きみごろも本舗
宇陀に行ったら『きみごろも』を食べないと、と言われていて。
どういう食べ物かな?と思いながら、
出していただいたそれは、なにやら黄色い揚げ豆腐のような見た目で…!!!
口にいれると、ふわっふわのメレンゲ。ほろ甘くてなにこれ美味しいーーー♡
唯一無二のふわふわ、と言われる奈良の長谷寺も御用達の宇陀銘菓。
材料は卵とお砂糖と寒天だけ。泡のようにはかなく、ほろ甘い玉子焼きのようでいくつでも食べられそう。
いろいろなお菓子やさんが作るけれど、ここのが町一番と評判のようで。
伝統を支えるのは、まだまだ若いオーナーご夫婦♡
はまっちゃいました!ご馳走さまでした。
そしてお隣は、奈良漬けやさん。
◆奈良漬 いせ弥
150年前に酒蔵として創業したというこちらのお店。
こうじの販売を経て、現在は奈良漬けの名店としてこの地に根付いています。
試食をさせていただくと。
定番のうりやすいかも美味しかったけれど、柿の奈良漬けがこりこりととっても美味しくて。
茶粥にして朝からいただくのもよさそう~♪
さすがにお腹いっぱいだけど、近く葛菓子のお店があると聞いてもう1軒!
◆葛の館 茶房 葛味庵
http://www.morino-kuzu.com/chokubai/
なんと、先ほどの森野薬草園さんの工場に併設されているお茶屋さんで、注文してから出来立ての葛菓子を食べさせて頂けます。
葛きり 735円
とゅるるんっと、夏の味。黒蜜とこんなに相性の良いものってあるかな。
葛もち 630円
あっさりしていて、舌ざわりがとゅるん。だってほら、出来立て!
本蕨(わらび)もち 840円
珍しい本わらび粉を使ったもので、もちもちっと弾力が強く、おいしい!
今まで売っていたわらび餅はなんだろう?!と思うと、ふつうに売っているわらび餅はジャガイモのデンプン粉を使っているものが多いのだとか。
時間が経つとどんどん、透明度がなくなっていく。びっくり。
訪れないと食べられないもの。嬉しい。本日何度目かわからない、ご馳走さまでした。
あっという間に夕方になり、本日のお宿『奈の音』さんにチェックイン。
宇陀松山地区そばにある、築120年の醤油醸造の蔵元を改装した古民家民宿です。
気づいたら夜も更け、ご主人が手づくりの灯篭を庭に灯してくださって。
お風呂を頂いたあとは、電気を消して縁側でのーんびり。
▷2日の朝は宇陀の町並みをお散歩
清らかな光で自然に目が覚める朝。
すっかり涼しくなった奈良の風に誘われてお散歩に出かけます。
昨晩からお世話になっている、ゲストハウス奈の音さん。
古民家を丁寧に利用されたとても落ち着く空間は、風通しが良く、暖炉もあります。
入口横には薬草の瓶がたくさんあり、ジブリの世界にタイムスリップした気分。
歴史的な松山地区の、西口関門の近くという立地もすてきっ*
近くを散策します。
この街の、古くとも柔らかな空気感がすきっ。
朝には、朝にしか出会えない風景がありました。
これは泊まるからこそ出会える風景です。
▷古民家宿で朝食を
奈の音さんに戻ると、朝ごはんもうできますよと。
居間に座って待っていると、運ばれて来た御前の朝食…!!!!!
道の駅や、お知り合いの朝採れ直売所で買う地元の野菜をできるだけ使っていますと。
季節のお野菜がたくさん!朝から嬉しい朝ごはんです。
そして土鍋で出していただいたご飯。
お焦げだーーー!ぜいたくーーっ!!!
しあわせな朝食をご馳走さまでした。
お出かけしてきますねと、松山の町をまたてくてくと。
あ!ここだぁ。お宿さんに教えてもらった無人販売所。
みずみずしいお野菜たくさん!ぜんぶひゃくえんっ!♡
町並みも人もすてきで、工芸や農作物を主体に体験場所もたっくさんある宇陀。
初夏から秋頃までブルーベリー狩りできるブルーベリー農園さんもあったり、まだまだ行きたいところたくさん!
大阪からも電車でアクセスがよい、宇陀。
タイムスリップしたような町並み残る場所でおいしいもの巡りをしてはいかがでしょうか。
宇陀エリアに泊まるなら!おすすめのおいしいお宿さん
薬の町に泊まって薬草摘み&薬酒づくり体験を
室生山を一望する古民家宿で料理自慢のお母さんの山菜料理を
1日1組のピザ工房で本格ピザ窯の夕食を
次回もローカルな旅のご紹介をします。お楽しみに