実は泊まれる!日本のお茶農家さんのお宿
Writer: トラベルデザイナー 松下 裕美
▷その土地に暮らしように泊まる
最近よく耳にするようになった「体験型」という言葉。
今まで定番だった観光名所の見学や買い物からその土地の人との交流やそこの生活を体験したいと旅の楽しみ方の変化が感じられます。
そんな現地の人たちの日常生活に触れるアグリツーリズムの先進国イタリアではワイン農家に泊まってぶどうの収穫をして、ディナーではそこで作られたワインを味わったり、またチーズ農家でチーズを作ったり、レモン農家でレモンを収穫したりとアグリツーリズモ(日本でいう農家民宿)は多種多様。
日本のアグリツーリズモとなるとどうしても野菜を収穫をするところでしょと、一まとめにされることがあり、農家民宿=野菜農家に泊まる と思っている方も多いのかなと感じました。
▷泊まれるお茶農家さんを紹介!
もちろん野菜農家さんもその地域ならではの野菜を収穫して夕ご飯で味わうことができて個人的に大好きなのですが、今回は野菜農家さん以外の体験できるお宿をご紹介します。
日本には各地にお茶の生産地がありますが、実は宿泊してお茶を摘んだり、茶葉を使ったお食事をいただけるお茶農家さんがあるのです。
お茶と言っても各地域で製法も違いますので、飲み比べると全く香りも味わいも異なります。お茶のペットボトルも便利ですが、茶畑が広がる場所で丁寧に淹れてゆっくりとお茶を味わってもらいたいなと思います。
▷京都の泊まれるお茶農家さん
京都のお茶と言えば多くの方が宇治と答えると思いますが、京都産のお茶の4~5割が同じ京都の和束町で作られる和束茶で、宇治茶として売られているものもそのかなりの割合が和束産の茶葉だとも言われています。
そんな和束は空にまで届くかのような「石寺の茶畑」景観が有名で、この景色の写真を見たことがある方は多いのかなと思います。
そんな和束に泊まれるお茶農家さんは「茶農家民宿 えぬとえぬ」さん
和束町で代々茶農家を営んできたお茶農家の紀子さんが、お茶の文化を伝えるべく2017年にオープンされたばかりの農家民宿さんです。
到着するとご両親が育てられたという、碾茶(てんちゃ)を備前焼の「宝瓶」とよばれる搾り出し急須でお茶を淹れてくださいました。
40度以下のぬるいお湯でたしなむという、宇治や和束特有の「旨淹」は、その名の通りお出汁のような旨みがたっぷり。
時間の移り変わりとともに、だんだんと色も濃く味わいも変化していき、味の変化を楽しむことができました。日常でこんなにゆっくりお茶を飲むなんてないかも。
ご家族のお茶づくりへの想いを聞きながらゆっくりといただくこの時間はとても贅沢でした。
お待ちかねの夕食は先付6種類から始まります。
伺った時のメニューは
*夕方の摘みたて新芽酢味噌あえ
*生麩田楽おくみどり品種の自家製抹茶味噌
*雪の下の天ぷら
*抹茶の胡麻豆腐
*碾茶のお浸し自家製ポン酢あえ
とても独学で勉強されたとは思えない。。。
メインは碾茶を使って55度の低温でローストしたというローストビーフと、自家農園野菜のサラダ、お茶をうまく取り入れていて全部おいしかったです。
お風呂はお茶所らしくお茶風呂をゆっくりいただきました。
翌朝、お散歩に出るともう農作業の準備があちこちで始まっています。
朝の茶畑をお散歩できるなんて泊まれるお茶農家さんならでは。
朝ごはんはふわっふわのだし巻き卵など、うれしやさしいおかず数種と。
ぐつぐつと炊かれた焙じ茶の茶粥さん。あたたかくて、すーっと胃に流れ込んでいきます。
朝食後茶畑を案内していただきました。
車でお連れいただいた高台の景色。遠目で観ると、品種や早生かどうかなどによりパッチワークのような色を成します。
全部で6丁、24箇所もあるという紀子さん家の茶畑のひとつにお邪魔すると、あさひという、碾茶用品種のお茶摘みの真っ最中。
わたしもお手伝いさせていただきました。機械で刈れない場所の茶葉は手摘みで。わたしもお手伝い♩
お宿に戻り、お抹茶をたてていただいて、桜と苺の手づくりロールケーキと一緒にいただきました。
最後の最後までお茶を楽しく味わえました。
作法とか気にせず、もっと気軽にお抹茶を楽しんでほしいと、紀子さん。お茶ってこんな楽しいものなんだ!とたくさん教えていただきました。
こちらのお宿さんの詳細はこちら
▷福岡の泊まれるお茶農家さん
九州・福岡のお茶どころ八女。
茶畑が一面見渡せるスポット、八女中央大茶園製茶は本当に見渡す限り茶畑でここがお茶どころということを改めて感じさせてくれます。
2軒目に紹介するお宿さんは「天空の茶屋敷」、八女の中心部から車で40〜50分ほど山の奥にあがった標高450mにある笠原地区にあります。笠原地区は中国から茶が伝わった地区で、八女茶の発祥の地。笠原地区のお茶はすべて無農薬で、同じ八女でもまた味わいが異なります。
こちらは美しい棚田があり、茶畑と棚田一緒に見れるめずらしい場所にあるお宿です。
オーナーの坂本さんはこの地の空き家を改築し、ゲストハウスを始められて、お茶も作られています。
こちらのお宿は個室もありますが、基本的にドミトリー型でみんなでごはんを作ってみんなで食べるスタイル。中心部から離れているのにも関わらず海外からの方の滞在が多いのに驚きました。
昭和にタイムスリップしたかのようなお部屋。
お伺いしたのはちょうどお昼時で海外の方がかまどでごはんを炊いていらっしゃいました。
私でもなかなか炊いたことないのに。。。
オーナーの坂本さんはカナダで犬ぞりの仕事をされてたり、スペイン巡礼もされたり、世界各地を放浪されていて、この笠原地区にたどり着いたという本当に物語を聞くだけでも面白い方。
お茶の収穫時期にはお茶の収穫を手伝ったり、お知り合いのお茶工場の見学をすることができます。ヨガの資格もお持ちでお茶畑と棚田が広がるロケーションでヨガもできる、まさに暮らすように滞在するお宿。
こちらのお宿さんの詳細はこちら
いかがでしたでしょうか。
体験型宿泊や農家民宿と言ってもそれぞれ個性があり、そこに行かないと体験できないことばかりだし、そこに行って初めて知ることばかり。
何もかも揃っておもてなしのお宿ももちろんすばらしいけど、たまには現地の人と交流交流して暮らすように過ごしその土地の文化にどっぷり浸かると出会いも生まれるし、忘れられない旅になると思います。
他にもお茶どころのお宿さんがたくさん!詳しくはこちら
次回もおいしいお宿さんをご紹介します。